Connecting the Dots

米国証券法、デリバティブ、香港証券市場について学んだことを書いていきます。当ブログは法的アドバイスを提供するものではありません。ブログ中の意見にわたる部分は個人的見解であり、私が所属する事務所の見解を述べるものではありません。

2013-10-01から1ヶ月間の記事一覧

CFTC  ブローカーによる超過証拠金の使用を禁じる

2013年10月30日、米商品先物取引委員会(CFTC)は、ブロカーが顧客から預かった証拠金の使用することを禁じるルールを採用しました。 従前、顧客から預かった証拠金のうち当該顧客に対するエクスポージャーを超過する部分については、特段規制ルールがなく、…

シンガポールでOTCデリバティブの取引報告が開始

デリバティブ取引情報については当局への報告義務が世界的に課せられることになります。当局への報告は、清算集中される場合は、清算機関を通してなされることになりますが、それ以外の場合は、当事者自身が行うか、情報蓄積機関を通しての報告を行う必要が…

ISDA Amend-EMIR Counterparty Classification Toolの追加

Dodd Frank やEMIRにおいては、取引の相手の属性によって遵守すべき事項が異なってきます。したがって、相手方の属性によってISDAの契約についても変更する必要があります。それって取引ごとに確認していたら面倒ですよね。 そこで、2012年8月、ISDAとMarkit…

中国平安保険集団(ピンアン・インシュランス)によるDim Sum Bondの発行

2013年10月30日のSouth China Morning Postの記事によると、中国平安保険集団が18億元ほどのDim Sum 債を発行したそうです。クーポンは4.75%だそうです。 話はそれますが、YuanとRenminbiの違いを初めて知りました。Yuanは通貨の単位(元のこと)でRenminbi…

投資信託の現状ついて―優秀なファンドマネージャーの育成が必要では?!

投資信託とは、個人投資家から小口のお金を集めて、その集まったお金を投資のプロが投資テクニックを駆使したり、個人投資家が投資できないような海外金融商品に投資をし、その結果収益が上がった場合には投資家にリターンを還元するというものです。 1 投…

株式増資局面における待機期間の撤廃について

2013年10月25日金融庁発表の資料によると、増資局面において待機期間を撤廃しようという議論が行われています。 1 待機期間とは 有価証券の募集・売出しを行う場合、有価証券届出書を提出した日から、実際に売り付けができるまで、待機期間が金商法上設けら…

サムライ債やユーロCBは会社法の「社債」といえるか?

クロスボーダー案件においては、日本の会社が海外で資金調達をすることや(内→外)、海外の会社が日本で資金調達をすること(外→内)があります。 ここで日本の会社や海外の会社が発行する債券が、会社法上の「社債」に該当するのかが大きな問題となります。…

2013年 銀行法13条改正による大口信用供与規制の見直し

2013年6月12日銀行法の改正により、大口信用供与規制の見直しが行われました。ただ、法改正は、信用供与規制を強化するという大枠しか定まっておらず、細かな規制については府令や政令を通して策定されることになります。 1 大口信用供与規制の趣旨 …

ベイルイン (Bail In)導入について

2013年6月12日、預金保険法が改正されました。預金保険法は、行政主導(預金保険機構)による破綻金融機関を救済方法について規定しています。金融機関が破綻しそうな場合には、影響が大きいので裁判所にいきなり突撃ということは通常ありません。例えば、20…

外国銀行支店の預金者保護

外国銀行支店に預けている預金は、外国銀行が破綻した時に預金保険で保護されるのでしょうか。答えは、ノーです。外銀支店に預けている預金は、預金保険の対象から外れています。2013年1月28日の金融庁の発表でも、外銀支店の預金保護は見送られました。 ち…

日本版JOBS法?−クラウドファンディング規制の導入について

2013年6月26日から、金融庁でクラウドファンディングの導入について検討がなされています。クラウドファンディング(Crowd Funding)とは、新興企業がインターネットを通じて、多数の投資家から少額ずつ集める仕組みをいいます。2012年に米国でクラ…

日本版スチュワードシップコードの導入について

平成25年8月6日から金融庁において、「日本版スチュワードシップ・コード」の導入について検討が開始されています。スチュワードシップといっても、聞き慣れない言葉で、私自身すんなり頭に入ってこず、Googleで調べようと際に「スチュワーデス」・コー…

サムライ債デフォルトから個人投資家を守れ

大分昔の話ですが、アルゼンチンが2001年にデフォルト宣言したのを覚えていますでしょうか。当時、アルゼンチンは日本の投資家に向けてサムライ債を発行していました。日本のサムライ債投資家は、アルゼンチンが「お金は2割程度しか返さないよ」と言っ…

CSAの準拠法ってどれを選択するといいの?

Credit Support Annex(CSA)は日本法、NY法、UK法準拠の3つのひな形があります。担保を取得する場合に、どのひな形を使うのがいいのでしょうか。 この点についてはISDAのCollateral Opinionでも検討しているんですが、私も全く同じ意見です。すなわち、JGB、…

米のデフォルトにより米国債CDSのCredit Eventが発生するか?

米国債CDSのコストが急上昇しているそうです。それに伴い、2013年10月11日のBloomberg TVで、ISDA General Counsel であるDavid Greenさんがどういった事実が米国債CDSのCredit Eventに該当するかについて述べていました。 1 誰がCredit Eventを判断するの…

香港観光スポット−Central Mid Level Escalator

今回は、香港の10大観光スポットの1つの、Central Mid−Levelにある世界一長い屋外エスカレーターについて紹介したいと思います。 このエスカレーターは、Centralという金融街の裏手にあり、長さは800メートル近くあり、下から上までは約23分ぐらいかかる…

アリババ NY上場への道も前途多難?

アリババは香港上場をあきらめてNY上場を目指すと伝えられていますが、NY上場においても、下記のような問題があります。 ①パートナー制はアメリカでも受け入れられない? NYで認められているDual Class Structureというのは、特定の少数株主が取締役の選任及…

保険会社とのデリバティブ取引

今回は、保険会社とデリバティブ取引を締結していた場合、どのように処理されるか検討してみたいと思います。 1 保険会社はどうやって破綻する? 保険会社が破綻の処理は、大きく分けて保険業法による手続きと、会社更生法(特例法)による手続きに分けられ…

中国工商銀行(ICBC)のバーゼル3準拠のBondの発行について

2013年10月2日、株式時価総額で世界1位の銀行である中国工商銀行(Industrial and Commercial Bank of China)を発行体とする、アジアで初のバーゼル3に準拠したBond(Basel III compliant bond)のPricingが行われたようです。 Bondの基本的な条件は、総額…

クレジット・サポート・アネックス(CSA)の法的性質

日本法準拠のCSA(Credit Support Annex)は、質権構成(pledge)と消費貸借・相殺構成(Loan&Set-off)のいずれの法的性質を選択することが可能になっています。 いずれを選択するのがよいのでしょうか。以下具体的事例にそって検討していきたいと思います。 【検…

デリバティブ取引における自己資本規制と証拠金規制

今回はデリバティブ取引における自己資本規制と証拠金規制についてです。 2009年9月のG20のピッツバーグ・サミットを受けて、中央清算機関(CCP)を通じて決済されないデリバティブ契約(非CCP取引)は、より高い所要自己資本賦課の対象となりました。さらに…

OTCデリバティブにおける誤方向リスク取引(Wrong Way Risk Transaction)

誤方向リスク(Wrong Way Risk Transaction)とは相手方へのエクスポージャーが増えると共に、当該相手方のデフォルトリスクも同時に高まるリスクのことを指します。これだけでは何を言っているかイメージがわかないので、具体例を見ながら、誤方向リスクに…

米国のインサイダー取引について

最近日本でインサイダー取引規制が改正されたのに触発されたので、今回は米国のインサイダー取引について書きたいと思います。 1 根拠条文 米国のインサイダー取引は、Rule 10b-5が根拠条文とされています。ただ、日本の金商法の様に明確にインサイダー取引…

アリババ−NYでの新規上場は最善の策か?

アリババが、支配権を維持しつつ、香港証券取引所(HKEX・Hong Kong Stock Exchange)に上場したいが、SFCやHKEXがそれを拒んでいる、アリババはすでにニューヨーク上場をめざし、シンプソン・サッチャーという法律事務所に依頼しているという噂が流れていま…

米国証券法−短期売買差益(Short Swing Profit)について

今回は米国証券法における短期売買差益についての投稿です。 1 短期売買差益の返還 (Short Swing Profit)の概略 米国証券法16条に短期売買差益の返還の規定があります。この規定は、6ヶ月の期間に内部者が自社株の取引を行うことによって得た利益を剥奪…

香港におけるオフショア人民元の流動性拡大

従前、香港金融管理局(Hong Kong Monetary Authority・HKMA)は、香港における急激な人民元市場の拡大による不要な混乱を避けるために、人民元の取り扱いに関しては、Net Open PositionとLiquidity Ratioの両面から規制をかけていました。すなわち、HKMAは2…

ISDAにおけるPortfolio Reconciliation

今日はEMIRで義務付けられたPortflio Reconciliationについての投稿です。 1 デリバティブの価値について デリバティブの評価額は、算定に当たってどのような要素を取り込むかによって大きく変化します。訴訟においても、どの証券会社や情報サービス会社か…

点心債(Dim Sum Bond)の特徴

アリババが熱いのでEquityばっかりの記事になっていますが、今日はDebtについて書きたいと思います。 香港でのDebtによる起債で有名なのは点心債(Dim Sum Bond)です。 点心債というのは、香港で発行される人民元建て債券のことをいいます。オフショア人民建…

ISDA Scheduleー日本の会社がGuaranteeとして入る場合

デリバティブ取引の当事者が、日本の会社が親会社とする外国法人で、日本の親会社がCredit Support Providerとして、保証人となる場合に、どの点を注意してScheduleをReview すべきでしょうか。 別途CollateralをCSAに基づいて差し入れる場合には、Japanese …

証券取引所は金儲けをしとけばよい?!

2013年10月1日のSouth China Morning Postの記事から。 アリババの悲劇(アリババが香港上場をあきらめたこと)が起こらないよう、香港証券取引所は取引所の運営で収益を上げるのに専念すればよく、上場審査は規制当局にすべてお任せすればいいのではないか…