Connecting the Dots

米国証券法、デリバティブ、香港証券市場について学んだことを書いていきます。当ブログは法的アドバイスを提供するものではありません。ブログ中の意見にわたる部分は個人的見解であり、私が所属する事務所の見解を述べるものではありません。

デリバティブ

担保法制の改定‐担保権者が担保物を処分してよいか?

2014年3月15日号金融・商事判例の渡辺先生(早稲田)の商事判例研究を読んで、改めて日本版CSAの担保余剰部分の返還請求についての改定が必要だなと感じました。 デリバのカウンターパーティーリスクの対処方法としては、 ① 清算機関を通して清算する ② …

LIBOR やTIBOR は消滅するとISDAはどうなるのか

LIBOR やTIBORなどの金融指標については世界的に規制が進んでいます。最終的にどのような規制となるかは現段階では不明ですが、改革がなされると、対象となる金融指標に言及している契約書は少なからず影響をうけることになります。特に、デリバティブ取引に…

US のスワップ規制によりスワップ取引量が減少

ISDAのレポートによれば、USのスワップ規制のためEUとUSとのスワップ取引量が77%近く減少しているようです。本日のFTの記事にも載っていました。 主な原因はCFTCが規定したUS personの定義が広すぎるのが影響したようです。CFTCはやはりUS Personの定義…

デリバティブ取引の当初価値がマイナスなことについて

デリバティブ取引の当初価値が金融機関の手数料やマージンの関係上、顧客にマイナスに設計されていることは何度か書いたと思います。 銀行関係者はマイナスであることは当然だし何も悪くないと言います。確かに、当初価値がマイナスであることについては、銀…

駒沢VSドイツ証券-デリバ訴訟

駒沢大学が、ドイツ証券に対し、デリバティブ取引によって約69億円の損失を蒙ったとして損害賠償請求をした事件の判決を読みました(東京地裁平成25年4月16日)。 結果は、駒沢が敗訴し、現在控訴中のようです。 本裁判において駒沢が突破すべき第一…

ボルカー・ルールと日本のファイアーウォール規制について考える

ボルカー・ルールは、銀行が投機的取引を行うことを禁止すること及び銀行のファンドとの提携禁止をその内容としています。ボルカールールの細かな内容については、他のサイトでも紹介されているので、今回は日本の規制と比較しながら、ボルカー・ルールのよ…

ロンドンの鯨について

2013年12月10日に、FRBなどが銀行の自己勘定取引を制限するボルカールールの最終案を公表したそうですが、業務が忙しくまだ読めていません。 今回は、ボルカールールの最終案公表を受けて改めて、ボルカールールによる規制をより後押しするきっかけとなった…

CSAに基づき差入れられた担保物の分別管理義務について

リーマンが破綻した際に、リーマンに預けた保護預かり有価証券がどこに行ってしまったか分からなくなり、保護預り有価証券の返却がうまくいかなかったと言われています。 その経験を踏まえて2010年に金商法が改正され、デリバティブ取引に関し金融商品取引業…

ISDA がCFTCを訴える

2013年12月4日、ISDA、SIFAやIIBがCFTCの作ったルールが気にくわなかったみたいで、CFTCが行政手続法(Administrative Procedure Act)に違反してルールを策定したとして訴えを提起したそうです。なお、ISDAがCFTCを以前にも訴えたことがあり、その件ではISD…

CDS市場における競争法違反―ISDA vs Salix

ISDAがNY州南部地区裁判所において、Salixという会社から、CDS市場を不正操作をしたとして訴えられています。http://www.law360.com/articles/492314/isda-bashes-quinn-s-bid-to-dodge-dq-in-swaps-rigging-suits?article_related_content=1 Salixの主張は…

ISDA Cross-Agreement Bridgeとは

預金取引、債権レポ取引、債券現物取引などは、取引の性質上、ISDA Master Agreementの対象とできない取引とされていることから、実務上は、Oversea Securities Lender Agreement(OSLA)やGlobal Master Securities Lending Agreement(GMSLA)などのISDA Maste…

ISDA Close-Out Amount Protocolについて

1 ISDA プロトコル(Protocol)とは プロトコル(Protocol)とは、複数の者が対象となる事項を確実に実行するための手順を定めたものをいうとされています。ISDAプロトコルにおいては、プロトコルに参加する当事者同士が契約を締結する場合には、適用のある…

デリバティブ取引の時価評価の説目義務について―東京地裁平成24年9月11日

デリバティブの適合原則・説明義務違反による訴訟は、一時期、過払い訴訟のような過熱ぶりを見せていたようですが、おそらく後数年もすれば落ち着きを取り戻してくると思われます。取引時点から証券会社が何億円も得するような、詐欺まがいのデリバティブ商…

Inter Affiliate Set Off条項を有効とみとめた事例―東京地裁平成25年5月30日

先日Inter Affiliate Set Off条項について管財人から争われた場合には否認される可能性が高いとの記事を書きましたが、お恥ずかしながら、東京地裁の判決でInter Affiliate Set Off条項の有効性を認める判断が出ました。控訴されていますが、確定した場合に…

清算集中(CCP)の法的構成について

2011年にCDS、2012年にIRSへとデリバティブ取引の清算集中取引が拡大していることから、デリバティブを学ぶ者として清算集中について何度か書こうと試みました。しかし、自分の中で中々整理できてなかったので先延ばしにしていました。。 本音をいえば未だに…

CSAのおける現金担保の取り方

CSAにおいて現金を担保として利用することがありますが、質権構成と消費貸借の構成のどちらがよいのでしょうか。 1 質権構成における現金担保の取り方 ①対抗要件の取り方 質権構成においても現金を担保にとることができます。この場合、質権設定者名義の口…

ISDA ScheduleにおけるInter Affiliate Set Off 条項の有効性について

ISDA ScheduleをReview していると、たまにInter Affiliate Set Off条項が入っているScheduleを目にします。通常のSet off条項はデリバティブ取引の当事者の債権・債務の相殺を目的とするものですが、Inter Affiliate Set Off条項では、デリバティブ取引の当…

韓国でEquity-link Derivativeの取引高が激減

2013年11月12日のFinancial Timesに、当局のデリバティブ取引の取り締まりを強化したことにより、韓国のデリバティブ市場が著しく縮小しているとの記事がありました。 韓国においてデリバティブ取引の規制が強化された背景には、デリバティブの市場が極めて…

BCBSおよびIOSCO発表の証拠金規制について

2012年7月にバーゼル銀行監督委員会(BCBS)および証券監督者国際機構(IOSCO)がデリバティブ取引の証拠金規制の市中協議書を公表しました。 1 証拠金規制の概要 市中協議書においては、ポテンシャル・エクスポージャーを反映させた当初証拠金(Initial Ma…

CFTC  ブローカーによる超過証拠金の使用を禁じる

2013年10月30日、米商品先物取引委員会(CFTC)は、ブロカーが顧客から預かった証拠金の使用することを禁じるルールを採用しました。 従前、顧客から預かった証拠金のうち当該顧客に対するエクスポージャーを超過する部分については、特段規制ルールがなく、…

シンガポールでOTCデリバティブの取引報告が開始

デリバティブ取引情報については当局への報告義務が世界的に課せられることになります。当局への報告は、清算集中される場合は、清算機関を通してなされることになりますが、それ以外の場合は、当事者自身が行うか、情報蓄積機関を通しての報告を行う必要が…

ISDA Amend-EMIR Counterparty Classification Toolの追加

Dodd Frank やEMIRにおいては、取引の相手の属性によって遵守すべき事項が異なってきます。したがって、相手方の属性によってISDAの契約についても変更する必要があります。それって取引ごとに確認していたら面倒ですよね。 そこで、2012年8月、ISDAとMarkit…

CSAの準拠法ってどれを選択するといいの?

Credit Support Annex(CSA)は日本法、NY法、UK法準拠の3つのひな形があります。担保を取得する場合に、どのひな形を使うのがいいのでしょうか。 この点についてはISDAのCollateral Opinionでも検討しているんですが、私も全く同じ意見です。すなわち、JGB、…

米のデフォルトにより米国債CDSのCredit Eventが発生するか?

米国債CDSのコストが急上昇しているそうです。それに伴い、2013年10月11日のBloomberg TVで、ISDA General Counsel であるDavid Greenさんがどういった事実が米国債CDSのCredit Eventに該当するかについて述べていました。 1 誰がCredit Eventを判断するの…

保険会社とのデリバティブ取引

今回は、保険会社とデリバティブ取引を締結していた場合、どのように処理されるか検討してみたいと思います。 1 保険会社はどうやって破綻する? 保険会社が破綻の処理は、大きく分けて保険業法による手続きと、会社更生法(特例法)による手続きに分けられ…

クレジット・サポート・アネックス(CSA)の法的性質

日本法準拠のCSA(Credit Support Annex)は、質権構成(pledge)と消費貸借・相殺構成(Loan&Set-off)のいずれの法的性質を選択することが可能になっています。 いずれを選択するのがよいのでしょうか。以下具体的事例にそって検討していきたいと思います。 【検…

デリバティブ取引における自己資本規制と証拠金規制

今回はデリバティブ取引における自己資本規制と証拠金規制についてです。 2009年9月のG20のピッツバーグ・サミットを受けて、中央清算機関(CCP)を通じて決済されないデリバティブ契約(非CCP取引)は、より高い所要自己資本賦課の対象となりました。さらに…

OTCデリバティブにおける誤方向リスク取引(Wrong Way Risk Transaction)

誤方向リスク(Wrong Way Risk Transaction)とは相手方へのエクスポージャーが増えると共に、当該相手方のデフォルトリスクも同時に高まるリスクのことを指します。これだけでは何を言っているかイメージがわかないので、具体例を見ながら、誤方向リスクに…

ISDAにおけるPortfolio Reconciliation

今日はEMIRで義務付けられたPortflio Reconciliationについての投稿です。 1 デリバティブの価値について デリバティブの評価額は、算定に当たってどのような要素を取り込むかによって大きく変化します。訴訟においても、どの証券会社や情報サービス会社か…

ISDA Scheduleー日本の会社がGuaranteeとして入る場合

デリバティブ取引の当事者が、日本の会社が親会社とする外国法人で、日本の親会社がCredit Support Providerとして、保証人となる場合に、どの点を注意してScheduleをReview すべきでしょうか。 別途CollateralをCSAに基づいて差し入れる場合には、Japanese …