Connecting the Dots

米国証券法、デリバティブ、香港証券市場について学んだことを書いていきます。当ブログは法的アドバイスを提供するものではありません。ブログ中の意見にわたる部分は個人的見解であり、私が所属する事務所の見解を述べるものではありません。

中国工商銀行(ICBC)のバーゼル3準拠のBondの発行について

2013102日、株式時価総額で世界1位の銀行である中国工商銀行(Industrial and Commercial Bank of China)を発行体とする、アジアで初のバーゼル3に準拠したBondBasel III compliant bond)のPricingが行われたようです。

Bondの基本的な条件は、総額5USドル、満期10年、5年の早期償還条項あり、315ベーシスポイント(3.15%)となっています。

今回のBondの最大の特徴は、Bondの中に規制当局による評価減スキームを含んでいることです。すなわち、香港金融管理局(HKMA)又は中国銀行業監督管理委員会(CBRC)が、発行体が危機的な状況(Non Viable)にあると判断した場合には、Bondの支払額を強制的にカットして、その損失を投資家に負担させることができるという条項が含まれています。この規制当局評価減スキームをいれることで、今回のICBCによるBondの発行は、バーゼル3におけるTire 2 Capital としての資格を有することになります。

このような新しいストラクチャーのBondを発行する場合には、ほとんど信用リスクがないと考えられる発行体が行うのが通常です。