Connecting the Dots

米国証券法、デリバティブ、香港証券市場について学んだことを書いていきます。当ブログは法的アドバイスを提供するものではありません。ブログ中の意見にわたる部分は個人的見解であり、私が所属する事務所の見解を述べるものではありません。

保険会社とのデリバティブ取引

今回は、保険会社とデリバティブ取引を締結していた場合、どのように処理されるか検討してみたいと思います。 

1 保険会社はどうやって破綻する?

保険会社が破綻の処理は、大きく分けて保険業法による手続きと、会社更生法(特例法)による手続きに分けられます。保険業法による手続きは金融庁による破綻処理で、会社更生法は裁判所による破綻処理です。

保険会社の破綻処理において、破産法や民事再生が用いられることは前例を見た限りないようです。破産法については、保険会社は公共的な性格を有しており会社を清算するわけにはいかないので用いられない。また、民事再生については、保険契約者は先取特権を有しており、手続外で自由に権利を行使されたら、再生手続が立ちいかなくなることが理由のようです。

また、会社更生法について言えば、会社更生法は株式会社にしか適用がないことから、相互会社である保険会社には金融機関に関する会社更生特例法が適用されることになります。また、保険業を営む保険会社にも、会社更生特例法が一部適用されることになります。

2 保険会社の破綻によってデリバティブ取引は終了するのか?

(会社更生の場合)

保険会社が会社更生を申し立てした場合、ISDAマスターのEvent of Defaultに該当することになります。ただ、当然に終了するかというとそういうわけではありません。Scheduleを確認する必要があります。ScheduleにおいてAutomatic Early Terminationが選択されている場合には、当然に終了することになります(昨今の改正で、規制当局により早期解約条項の効力が一定期間停止される可能性はあります)。一方で選択していない場合には、契約を終了するか否かを選択することになります。契約の終了を希望する場合には、破綻保険会社への通知が必要となってきます。

 契約が終了した場合には、デリバティブ取引の清算金額を算定し、破綻保険会社に通知する必要があります。清算金額の算定は、証券会社などにお願いすることになります。

(保険業法による破綻処理の場合)

そもそも保険業法による破綻処理の場合、Event of Defaultに該当するかという問題があります。規制当局による業務停止命令がEvent of Defaultに当たるとして先例があるのか不明です。きちんとは検討できてないですが、支払停止や管財人等の選任、債務超過などのいずれかのEvent of Defaultにあたることは問題ないのではないでしょうか。

3 CSAについて

保険会社の破綻では会社更生が選択されるケースが多いことを考えると、仮にCSAにおいて質権構成を選択してしまうと、会社更生手続きに巻き込まれ回収に遅れがでてしまいます。