Connecting the Dots

米国証券法、デリバティブ、香港証券市場について学んだことを書いていきます。当ブログは法的アドバイスを提供するものではありません。ブログ中の意見にわたる部分は個人的見解であり、私が所属する事務所の見解を述べるものではありません。

2013-01-01から1年間の記事一覧

ボルカー・ルールと日本のファイアーウォール規制について考える

ボルカー・ルールは、銀行が投機的取引を行うことを禁止すること及び銀行のファンドとの提携禁止をその内容としています。ボルカールールの細かな内容については、他のサイトでも紹介されているので、今回は日本の規制と比較しながら、ボルカー・ルールのよ…

ロンドンの鯨について

2013年12月10日に、FRBなどが銀行の自己勘定取引を制限するボルカールールの最終案を公表したそうですが、業務が忙しくまだ読めていません。 今回は、ボルカールールの最終案公表を受けて改めて、ボルカールールによる規制をより後押しするきっかけとなった…

香港における動産担保

香港における動産担保の取り扱いについてよくまとまったサイトを見つけました。 1 香港における動産担保 香港法における動産は、機械類、棚卸資産や船及び飛行機が含まれます。 担保の取り方について、整理すると下記のようになります。 担保の種類 性質 対…

香港M&A について

香港で事業を始めた日本人の方にお会いする機会がでてきました。私の専門はファイナンス・キャピタルマーケットですが、現在、香港M&Aについても興味をもったので勉強しています。 1 合併制度がない! 香港会社条例においては合併の制度が準備されておらず…

金融用語の整理

証券業務をやっていると多くの金融経済用語の頭字語に出くわして、時々これってどういう意味だったっけと分からなくなります。そこで、備忘用に下記まとめてみました。 略語 正式名称 日本語訳 コメント FRB Federal Reserve Board 連邦準備制度理事会 中央…

CSAに基づき差入れられた担保物の分別管理義務について

リーマンが破綻した際に、リーマンに預けた保護預かり有価証券がどこに行ってしまったか分からなくなり、保護預り有価証券の返却がうまくいかなかったと言われています。 その経験を踏まえて2010年に金商法が改正され、デリバティブ取引に関し金融商品取引業…

ISDA がCFTCを訴える

2013年12月4日、ISDA、SIFAやIIBがCFTCの作ったルールが気にくわなかったみたいで、CFTCが行政手続法(Administrative Procedure Act)に違反してルールを策定したとして訴えを提起したそうです。なお、ISDAがCFTCを以前にも訴えたことがあり、その件ではISD…

CDS市場における競争法違反―ISDA vs Salix

ISDAがNY州南部地区裁判所において、Salixという会社から、CDS市場を不正操作をしたとして訴えられています。http://www.law360.com/articles/492314/isda-bashes-quinn-s-bid-to-dodge-dq-in-swaps-rigging-suits?article_related_content=1 Salixの主張は…

ISDA Cross-Agreement Bridgeとは

預金取引、債権レポ取引、債券現物取引などは、取引の性質上、ISDA Master Agreementの対象とできない取引とされていることから、実務上は、Oversea Securities Lender Agreement(OSLA)やGlobal Master Securities Lending Agreement(GMSLA)などのISDA Maste…

ISDA Close-Out Amount Protocolについて

1 ISDA プロトコル(Protocol)とは プロトコル(Protocol)とは、複数の者が対象となる事項を確実に実行するための手順を定めたものをいうとされています。ISDAプロトコルにおいては、プロトコルに参加する当事者同士が契約を締結する場合には、適用のある…

デリバティブ取引の時価評価の説目義務について―東京地裁平成24年9月11日

デリバティブの適合原則・説明義務違反による訴訟は、一時期、過払い訴訟のような過熱ぶりを見せていたようですが、おそらく後数年もすれば落ち着きを取り戻してくると思われます。取引時点から証券会社が何億円も得するような、詐欺まがいのデリバティブ商…

Inter Affiliate Set Off条項を有効とみとめた事例―東京地裁平成25年5月30日

先日Inter Affiliate Set Off条項について管財人から争われた場合には否認される可能性が高いとの記事を書きましたが、お恥ずかしながら、東京地裁の判決でInter Affiliate Set Off条項の有効性を認める判断が出ました。控訴されていますが、確定した場合に…

清算集中(CCP)の法的構成について

2011年にCDS、2012年にIRSへとデリバティブ取引の清算集中取引が拡大していることから、デリバティブを学ぶ者として清算集中について何度か書こうと試みました。しかし、自分の中で中々整理できてなかったので先延ばしにしていました。。 本音をいえば未だに…

CSAのおける現金担保の取り方

CSAにおいて現金を担保として利用することがありますが、質権構成と消費貸借の構成のどちらがよいのでしょうか。 1 質権構成における現金担保の取り方 ①対抗要件の取り方 質権構成においても現金を担保にとることができます。この場合、質権設定者名義の口…

Regulation FD について

米国証券法にはRegulation FDという、公表前に重要な非公開情報をアナリストや一部の株主などに開示することを禁止するルールがあります。一部の者にだけ重要情報が伝わることによってインサイダー取引が誘発することを防止する機能があります。ポイントは、…

ISDA ScheduleにおけるInter Affiliate Set Off 条項の有効性について

ISDA ScheduleをReview していると、たまにInter Affiliate Set Off条項が入っているScheduleを目にします。通常のSet off条項はデリバティブ取引の当事者の債権・債務の相殺を目的とするものですが、Inter Affiliate Set Off条項では、デリバティブ取引の当…

韓国でEquity-link Derivativeの取引高が激減

2013年11月12日のFinancial Timesに、当局のデリバティブ取引の取り締まりを強化したことにより、韓国のデリバティブ市場が著しく縮小しているとの記事がありました。 韓国においてデリバティブ取引の規制が強化された背景には、デリバティブの市場が極めて…

BCBSおよびIOSCO発表の証拠金規制について

2012年7月にバーゼル銀行監督委員会(BCBS)および証券監督者国際機構(IOSCO)がデリバティブ取引の証拠金規制の市中協議書を公表しました。 1 証拠金規制の概要 市中協議書においては、ポテンシャル・エクスポージャーを反映させた当初証拠金(Initial Ma…

CFTC  ブローカーによる超過証拠金の使用を禁じる

2013年10月30日、米商品先物取引委員会(CFTC)は、ブロカーが顧客から預かった証拠金の使用することを禁じるルールを採用しました。 従前、顧客から預かった証拠金のうち当該顧客に対するエクスポージャーを超過する部分については、特段規制ルールがなく、…

シンガポールでOTCデリバティブの取引報告が開始

デリバティブ取引情報については当局への報告義務が世界的に課せられることになります。当局への報告は、清算集中される場合は、清算機関を通してなされることになりますが、それ以外の場合は、当事者自身が行うか、情報蓄積機関を通しての報告を行う必要が…

ISDA Amend-EMIR Counterparty Classification Toolの追加

Dodd Frank やEMIRにおいては、取引の相手の属性によって遵守すべき事項が異なってきます。したがって、相手方の属性によってISDAの契約についても変更する必要があります。それって取引ごとに確認していたら面倒ですよね。 そこで、2012年8月、ISDAとMarkit…

中国平安保険集団(ピンアン・インシュランス)によるDim Sum Bondの発行

2013年10月30日のSouth China Morning Postの記事によると、中国平安保険集団が18億元ほどのDim Sum 債を発行したそうです。クーポンは4.75%だそうです。 話はそれますが、YuanとRenminbiの違いを初めて知りました。Yuanは通貨の単位(元のこと)でRenminbi…

投資信託の現状ついて―優秀なファンドマネージャーの育成が必要では?!

投資信託とは、個人投資家から小口のお金を集めて、その集まったお金を投資のプロが投資テクニックを駆使したり、個人投資家が投資できないような海外金融商品に投資をし、その結果収益が上がった場合には投資家にリターンを還元するというものです。 1 投…

株式増資局面における待機期間の撤廃について

2013年10月25日金融庁発表の資料によると、増資局面において待機期間を撤廃しようという議論が行われています。 1 待機期間とは 有価証券の募集・売出しを行う場合、有価証券届出書を提出した日から、実際に売り付けができるまで、待機期間が金商法上設けら…

サムライ債やユーロCBは会社法の「社債」といえるか?

クロスボーダー案件においては、日本の会社が海外で資金調達をすることや(内→外)、海外の会社が日本で資金調達をすること(外→内)があります。 ここで日本の会社や海外の会社が発行する債券が、会社法上の「社債」に該当するのかが大きな問題となります。…

2013年 銀行法13条改正による大口信用供与規制の見直し

2013年6月12日銀行法の改正により、大口信用供与規制の見直しが行われました。ただ、法改正は、信用供与規制を強化するという大枠しか定まっておらず、細かな規制については府令や政令を通して策定されることになります。 1 大口信用供与規制の趣旨 …

ベイルイン (Bail In)導入について

2013年6月12日、預金保険法が改正されました。預金保険法は、行政主導(預金保険機構)による破綻金融機関を救済方法について規定しています。金融機関が破綻しそうな場合には、影響が大きいので裁判所にいきなり突撃ということは通常ありません。例えば、20…

外国銀行支店の預金者保護

外国銀行支店に預けている預金は、外国銀行が破綻した時に預金保険で保護されるのでしょうか。答えは、ノーです。外銀支店に預けている預金は、預金保険の対象から外れています。2013年1月28日の金融庁の発表でも、外銀支店の預金保護は見送られました。 ち…

日本版JOBS法?−クラウドファンディング規制の導入について

2013年6月26日から、金融庁でクラウドファンディングの導入について検討がなされています。クラウドファンディング(Crowd Funding)とは、新興企業がインターネットを通じて、多数の投資家から少額ずつ集める仕組みをいいます。2012年に米国でクラ…

日本版スチュワードシップコードの導入について

平成25年8月6日から金融庁において、「日本版スチュワードシップ・コード」の導入について検討が開始されています。スチュワードシップといっても、聞き慣れない言葉で、私自身すんなり頭に入ってこず、Googleで調べようと際に「スチュワーデス」・コー…