Connecting the Dots

米国証券法、デリバティブ、香港証券市場について学んだことを書いていきます。当ブログは法的アドバイスを提供するものではありません。ブログ中の意見にわたる部分は個人的見解であり、私が所属する事務所の見解を述べるものではありません。

ISDA Cross-Agreement Bridgeとは

預金取引、債権レポ取引、債券現物取引などは、取引の性質上、ISDA Master Agreementの対象とできない取引とされていることから、実務上は、Oversea Securities Lender Agreement(OSLA)Global Master Securities Lending Agreement(GMSLA)などのISDA Masterとは異なった業界マニアックなMaster契約が用いられています。

しかし、期限の利益喪失事由(Event of Default)についてISDA Master ISDA Master以外の契約との間に差異があると、Event of Defaultの発生の有無を管理するのがめんどうなことになります。そこで、ISDA BridgeAgreementが、期限の利益喪失事由(Event of Default)について、ISDA Master ISDA Master以外の契約との間の差異を埋めるためにドラフトされました。

ISDA Bridge Agreementは①2001 ISDA Cross Agreement Bridgeと②2002 ISDA Energy Agreement Bridge(通称、Energy Bridge。ただし、エネルギー業界を対象としている場合に使われるわけではない。)の2種類あります。2002年版Energy Bridgeも、2002年版なのに、2002年度版ISDA Master Agreementを前提としているわけではなく、1992年度版ISDA Masterを前提としている点には注意が必要です。したがって、2001年版Bridge共に、Energy Bridgeにおいても2002年度版ISDA Master Agreementとの関係では修正が必要と考えられています。

なお、2001年版Bridge AgreementEnergy Bridgeの大きな違いは、2001年版がISDA Master上のEvent of DefaultのみBridging Eventとしているのに対し、Energy BridgeISDA Master 以外のマスター契約上のEvent of DefaultをもBridging Eventとすることが可能になっています(適宜除外することが可能です)。

なお2001年版ISDA Bridge Agreementの大まかな枠組みは下記の通りです。

·         Bridged Agreementの指定

ISDA Master上のEvent of Defaultを適用したい契約をBridged Agreementとして指定します。締結したOSLAGMSLAなどの契約を記載することになります。

·         Bridging Event発生

Bridging Eventとは、通常の契約のEvent of Defaultに相当する概念です。2001Bridgeでは、ISDA MasterEvent of Defaultが発生したときのみBridging Eventが発生するとされています。一方で、Energy BridgeではBridged Agreementで規定されているEvent of DefaultについてもBridging Eventが発生するとされています。

·         Bridging Event 発生の効果

Bridging Eventが発生した場合、Event of DefaultISDA Master Agreement及びBridged Agreementについて発生したものとみなされます。

Event of Defaultが発生した場合には、次に問題になるのは契約の終了です。どのように契約が終了するかについては、まず早期自動終了条項を選択しているか否かで分かれます。

ISDA Master早期自動終了条項を選択している場合には、Bridged AgreementISDA Master と同様に自動終了することになります。

ISDA Masterにおいて早期自動終了を選択していない場合には、指定された終了日においてBridge Agreementも終了することになります。

また、2001年版ISDA Bridge Agreementにおいては、ISDA Masterにおいては取引が残存していないが、その他のBridged Agreementにおいて取引が残存している場合においても、Bridge Agreementの効果が引き続き及ぶことを認めています。その場合、Bridged  Agreementの終了のタイミングはISDA Bridge Agreementにおいて早期自動終了か、それとも当事者の通知が必要かを選択できます。

·         ISDA Bridge Agreementのメリット

ISDA Bridge Agreementを利用することによって、対象となる契約はそれぞれ別個独立した契約として扱われつつも、ISDA MasterにおけるClose out のメカニズムを指定されたBridged Agreementにも持ち込むことができます。

ISDA MasterClose out のメカニズムを他の契約に持ち込むことにより、当事者はISDA Master以外のEvent of Default事由を気にすることなく、ISDA MasterEvent of Defaultだけを把握すればよく、Event of Defaultの管理オペレーションが簡易なものになります