Connecting the Dots

米国証券法、デリバティブ、香港証券市場について学んだことを書いていきます。当ブログは法的アドバイスを提供するものではありません。ブログ中の意見にわたる部分は個人的見解であり、私が所属する事務所の見解を述べるものではありません。

香港M&A について

香港で事業を始めた日本人の方にお会いする機会がでてきました。私の専門はファイナンス・キャピタルマーケットですが、現在、香港M&Aについても興味をもったので勉強しています。

 

1 合併制度がない!

香港会社条例においては合併の制度が準備されておらず、香港の会社を買収するには事業譲渡ないし株式取得の方法のいずれかの方法によります。

 

2 株式取得

上場会社については、以下のようなルールに留意する必要があります。

買収・合併・自己株式取得コード

証券先物条例

日本と同様5%以上の株式保有となった場合に大量保有報告義務が発生します。

③上場規則

浮動株が25%以上でなければ上場廃止になる点と関連者取引に留意する必要があります。

 

上場会社以外の株式取得で注意すべきなのは、定款で譲渡制限がないかを確認することと、印紙税局へ売買契約書、申告書を提出し、印紙税を納税するのを忘れないことです。

 

3 事業譲渡による買収

(1)コツコツ移す

香港では事業を一括して移転させる手続きは存在しないので、譲渡対象財産については逐一移転の手続きをとる必要があります。これは日本も事業譲渡をしようとしたら、譲渡対象契約について個別に移転手続きをとらないといけないので、同じ仕組みです。

 

雇用契約については、旧雇用契約は一旦終了させて、改めて新雇用契約を締結する必要があります。

 

(2)移したくないものも付いてくる場合がある

譲渡前の債務について譲渡会社に残そうとしても、事業譲渡条例によって原則として、譲受会社も負担することになっています。この責任をのがれるためには、譲渡日の4ヶ月前から1ヶ月前までの間に広告をする必要があります(事業譲渡条例4条)

 

4 印紙税には日本以上に気をつけろ

株式の売買契約書には、印紙条例により売買価格および株式の適正価格の0.2%のいずれか高い金額の印紙税が課せられます。印紙税を貼らなかった場合、日本においては罰金を覚悟する程度ですみますが、香港においては契約書の証拠能力が裁判において認められないという不利益が発生します。