Connecting the Dots

米国証券法、デリバティブ、香港証券市場について学んだことを書いていきます。当ブログは法的アドバイスを提供するものではありません。ブログ中の意見にわたる部分は個人的見解であり、私が所属する事務所の見解を述べるものではありません。

カバード・ボンドについて

カバード・ボンドとは金融機関の貸付債権を担保として発行される債券のことです。債権担保付社債と訳されることもあります。日本では、カバード・ボンドというと聞き慣れないかもしれませんが、欧州ではかなり普及している債券です。

1 特徴

① 二重リコース

カバード・ボンドの特徴は、債券者の回収リスクが無担保債券者より低いところにあります。これは二重リコースと小難しい表現で言われたりしますが、要は通常の担保権者と同じです。すなわち、カバード・ボンドの保有者は、担保となる貸付債権からの回収も可能だし、担保資産を超える債権額についてはそれ以外の一般資産からの回収も可能となります。

② 低スプレッド

無担保の債権よりスプレッド(利率)が低く済むと考えられているため、発行体はより低コストで資金調達をすることができます。ぐたカバード・ボンドのスプレッドは、ソブリン債と無担保債券の間くらいに位置する者と考えられています。

2 各国における法制化

カバード・ボンドを発行するために法律を制定する必要はあるのでしょうか。日本ではおそらく、SPCや信託を用いることで、特別法を制定しなくてもカバード・ボンドの発行は可能だと思われます。しかし、世界的にはカバード・ボンドについて法律を設けている国が圧倒的に多数です。法制化する理由は、仕組みの安定性を法的に認めることで商品自体の安全性に高まり、スプレッドを低く抑えることができるというのが1つの要因です。アジアでも、韓国が201312月にアジアで初めてカバード・ボンドの発行を銀行に認める法律を制定しました(20143月に発効予定)。

日本ではカバード・ボンドの法制化を2009年あたりからMETIやDBJにおいて議論はしているものの、日系金融機関の喫緊の需要がないことから法制化には至っていませんし、金融庁において審議会は開かれていません。一部の金融関係者は、証券化法制では日本が韓国よりリードしていたのに、金融の分野でも韓国に追い抜かれるのではないかという懸念を持っているようです。

日本の法制度のアジアへの輸出という点からしても、仮に使う必要性が乏しい状況にあっても早めに法制化した方がよかったのかもしれません。

3 制度設計

制度設計の枠組みとしては大きく分けて2つにわかれます。担保資産(カバープール)を自己信託を利用して金融機関内部で分別管理する方式と、担保資産をSPCに譲渡する方式です。SPC方式は、さらにSPC自体がカバード・ボンドを発行する場合と、本体の金融機関がカバード・ボンドを発行しSPCはその債券の保証をするという方式に分かれます。

4 法制化の際のポイント

SPC方式を取る場合には、倒産隔離と真正譲渡であることを確保する必要があります。倒産隔離については、詐害行為取消権や否認権の対象にならないことや金融機関の債権者の強制執行の対象にならないことを法的に宣言する必要があります。また、真正譲渡については、SPCへの資産譲渡が担保取引とみなされない手当が必要となります。SPCへの譲渡を売買ではなく、会社法上の現物出資の方法をもちいることにより、担保取引と再構成されるリスクは低減することできると考えられています。