Connecting the Dots

米国証券法、デリバティブ、香港証券市場について学んだことを書いていきます。当ブログは法的アドバイスを提供するものではありません。ブログ中の意見にわたる部分は個人的見解であり、私が所属する事務所の見解を述べるものではありません。

そろそろ復帰しようかな。。

1年以上更新せずに久しぶりにログインしてみると、なぜかアクセス数が2万近くになっていて驚愕しました。本音を言えばボケ防止ぐらいの軽い気持ちではじめたブログなので、そんなに見られたと思うと、なんか怖い。。

 

怖いと同時に、こんなブログでも訪問してくれる人がいて、facebookとかにshareまでしてくれる奇特な人がいると思うと、また書きたいなという気持ちも少し出てきました。複雑な乙女心。乙女じゃないけど。

 

週末にでも短い記事を書こうかな〜。

担保法制の改定‐担保権者が担保物を処分してよいか?

2014315日号金融・商事判例の渡辺先生(早稲田)の商事判例研究を読んで、改めて日本版CSAの担保余剰部分の返還請求についての改定が必要だなと感じました。

デリバのカウンターパーティーリスクの対処方法としては、

 

    清算機関を通して清算する

    カウンターパーティーから担保を取得する

 

という方法が考えられます。

 

    については金利スワップやCDS取引の店頭デリバティブ取引については清算集中が義務付けられる改正がなされています。清算機関で清算がなされているようなOCT取引については、②のように別途CSAを使って担保を取得する必要がないような気がするのですが、実務的にはどうなのでしょうか。

 

    については平成22年東京高裁判決が示す通り、消費貸借構成における余剰担保部分は取戻権として扱われないため、今後は担保権設定者を保護するための法改正が必要と思われます。渡辺先生は、担保法制をEU金融担保指令52(下記抜粋)を参考に改正する旨示唆しています。すなわち、担保権者が担保物を処分するのを認めつつも、担保権を使用する場合には、代替担保物に置き換える義務を課すというものです。現在の日本法上は担保権者が担保物を処分すると、担保権自体の有効性に疑義が生じます。なので、わざわざ消費貸借構成+相殺構成というトリッキーな法律構成で対処しています。アメリカでも担保権者は担保物を処分することが可能な仕組みになっています。

 

Article 5

Right of use of financial collateral under security financial collateral arrangements

2. Where a collateral taker exercises a right of use, he thereby incurs an obligation to transfer equivalent collateral to replace the original financial collateral at the latest on the due date for the performance of the relevant financial obligations covered by the security financial collateral arrangement.

Alternatively, the collateral taker shall, on the due date for the performance of the relevant financial obligations, either transfer equivalent collateral, or, if and to the extent that the terms of a security financial collateral arrangement so provide, set off the value of the equivalent collateral against or apply it in discharge of the relevant financial obligations.

 

LIBOR やTIBOR は消滅するとISDAはどうなるのか

LIBOR TIBORなどの金融指標については世界的に規制が進んでいます。最終的にどのような規制となるかは現段階では不明ですが、改革がなされると、対象となる金融指標に言及している契約書は少なからず影響をうけることになります。特に、デリバティブ取引においては金融指標に言及する契約は多く、影響は極めて大きいと思われます。

ISDAを使った契約においては、金融指標の定義については2006 ISDA Definitionに規定があます。そして、ISDA Definition にはLIBORなどが使えなくなった場合に備えて、代替的な金融指標を利用する旨の規定が置かれています(Fall Back Provision)

規制によりLIBOR TIBORが今までと違った形で算出されることが予想されますが、LIBOR TIBORの取り扱いは大きく分けて下記の2つに分かれると思います。

LIBORTIBORは新しい形であれ継続していると解釈する

LIBOR TIBORは消滅し、あたらしい金融指標が作られたと解釈する

①と解釈する場合には、Fall Back Provisionに依拠することなくそのままLIBORTIBORを使用することになります。②と解釈すると、LIBORTIBORは消滅することから、Fall Back Provisionに依拠して新たに算定する必要がでてきます。

最終的な規制が、単純に当局の規制のもとにおかれ具体的なオペレーションはなんら変更ないのであれば①と解釈することになると思われます。一方で、抜本的に金融指標の算定方法に変更があると評価できるような場合には、②と解釈されることになると思います。このあたりの解釈論争がもしかしたら今後でてくるかもしれません。

TIBORの規制について

LIBOR TIBORの不正操作をうけて金融指標の規制が進んでいます。日本では、20131225日付で「金融指標の規制のあり方に関する検討会」という報告書が公表されています。

上記報告書は、20137月の証券監督者国際機構(IOSCO)が公表した金融指標に関する19の原則に受けて作成されたものです。

金融指標が金融インフラ類似の性質を有することから、算出にあたって当局の規制に服することになりそうです。具体的には、「指定金融指標算出機関」として指定された団体がTIBORのような特定の金融指標の算出者として認められるという仕組みをとるようです。

また、算出者のみならず金融指標の「呈示者」も規制されることになりそうです。

銀行としては、指定金融指標算出機関として指定されると当局の検査や罰則の対象となることから、指定されたくないという気持ちもありつつも、指定されなかったらマーケットでの存在感がなくなるという影響や当局の圧力もあることから、おそらくチョットいやいやな気持ちで指定を受けることになるんでしょうか。

UK のBanking Reform Act

2014年の前半に英国のBanking Reform Act(改正銀行法)が施行される予定です。主要な改正点は、当局のベイルイン・オプションの導入と商業銀行と投資銀行の業務分離(リングフェンス)です。

ベイルイン・オプションが発動される条件は下記の3つとされています。

Prudential Regulation Authorityが銀行が破綻するおそれがあると認定

②他の手段により銀行の破綻を避けることが合理的でない

Bank of England がベイルインの行使が公益にかなうと認定

行使条件は上記のとおりですが、当局の裁量が極めて大きいので、どういった状況下においてベイルイン行使がなされるかの予測は難しいと思われます(法律事務所に問い合わせても無駄?!)。

なお、ベイルイン・オプションは今回の改正前に発行された債券も対象となります。

カバード・ボンドについて

カバード・ボンドとは金融機関の貸付債権を担保として発行される債券のことです。債権担保付社債と訳されることもあります。日本では、カバード・ボンドというと聞き慣れないかもしれませんが、欧州ではかなり普及している債券です。

1 特徴

① 二重リコース

カバード・ボンドの特徴は、債券者の回収リスクが無担保債券者より低いところにあります。これは二重リコースと小難しい表現で言われたりしますが、要は通常の担保権者と同じです。すなわち、カバード・ボンドの保有者は、担保となる貸付債権からの回収も可能だし、担保資産を超える債権額についてはそれ以外の一般資産からの回収も可能となります。

② 低スプレッド

無担保の債権よりスプレッド(利率)が低く済むと考えられているため、発行体はより低コストで資金調達をすることができます。ぐたカバード・ボンドのスプレッドは、ソブリン債と無担保債券の間くらいに位置する者と考えられています。

2 各国における法制化

カバード・ボンドを発行するために法律を制定する必要はあるのでしょうか。日本ではおそらく、SPCや信託を用いることで、特別法を制定しなくてもカバード・ボンドの発行は可能だと思われます。しかし、世界的にはカバード・ボンドについて法律を設けている国が圧倒的に多数です。法制化する理由は、仕組みの安定性を法的に認めることで商品自体の安全性に高まり、スプレッドを低く抑えることができるというのが1つの要因です。アジアでも、韓国が201312月にアジアで初めてカバード・ボンドの発行を銀行に認める法律を制定しました(20143月に発効予定)。

日本ではカバード・ボンドの法制化を2009年あたりからMETIやDBJにおいて議論はしているものの、日系金融機関の喫緊の需要がないことから法制化には至っていませんし、金融庁において審議会は開かれていません。一部の金融関係者は、証券化法制では日本が韓国よりリードしていたのに、金融の分野でも韓国に追い抜かれるのではないかという懸念を持っているようです。

日本の法制度のアジアへの輸出という点からしても、仮に使う必要性が乏しい状況にあっても早めに法制化した方がよかったのかもしれません。

3 制度設計

制度設計の枠組みとしては大きく分けて2つにわかれます。担保資産(カバープール)を自己信託を利用して金融機関内部で分別管理する方式と、担保資産をSPCに譲渡する方式です。SPC方式は、さらにSPC自体がカバード・ボンドを発行する場合と、本体の金融機関がカバード・ボンドを発行しSPCはその債券の保証をするという方式に分かれます。

4 法制化の際のポイント

SPC方式を取る場合には、倒産隔離と真正譲渡であることを確保する必要があります。倒産隔離については、詐害行為取消権や否認権の対象にならないことや金融機関の債権者の強制執行の対象にならないことを法的に宣言する必要があります。また、真正譲渡については、SPCへの資産譲渡が担保取引とみなされない手当が必要となります。SPCへの譲渡を売買ではなく、会社法上の現物出資の方法をもちいることにより、担保取引と再構成されるリスクは低減することできると考えられています。

US のスワップ規制によりスワップ取引量が減少

ISDAのレポートによれば、USのスワップ規制のためEUUSとのスワップ取引量が77%近く減少しているようです。本日のFTの記事にも載っていました。

主な原因はCFTCが規定したUS personの定義が広すぎるのが影響したようです。CFTCはやはりUS Personの定義をみなおすことになるんでしょうかね。